学校法務コラム
弁護士 堀岡 雄一

【国公立教員の時間外労働等と教員の働き方改革について(その②)】

1 国公立教員の時間外勤務手当についての主要な裁判例を見ると、給特法及び政令の例外要件を満たさない国公立教員の時間外勤務手当の請求について、「教職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態でなされ、しかもそのような勤務が常態化しているなど、かかる時間外勤務等の実状を放置することが同条例7条(注:給特法、政令と同趣旨)が時間外勤務等を命じ得る場合を限定列挙して制限を加えた趣旨にもとるような事情の認められる場合には」、労働に対する対価として本来取得すべき給与請求権までは排除されない、とした判示したものありますが、結論としては請求棄却となりました(名古屋地裁昭和63・1・29判タ674・110)。
 近時話題になった公立小学校教員による時間外労働に関する訴訟でも、地裁、高裁とも結論としては請求棄却とされました。
 このように、裁判例は、国公立教員の時間外勤務手当の請求を極めて限定的に解しています。

2 一方で、実際の教育現場では、国公立私立を問わず、教員の勤務の長時間化が常態化しています。    その主な原因としては、以下の事情が挙げられます(新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について〔中間まとめ〕)。
・授業や部活動に従事する時間の増加
・部活動の休養日の設定が浸透していない
・書類作成等への対応策が不十分
・時間管理の概念が希薄
・教師が持ち授業時間数を減らすという観点で教職員定数の改善が不十分
・子供たちのためにという使命感と責任感による業務範囲の拡大

3 このような状況下で、学校としては、教員の負担軽減のための対策が不可避となっています。文部 科学省の言葉を借りれば「学校における働き方改革は、特効薬のない総力戦」ではありますが、有能な教員の維持及び採用、また、私立教員の場合には時間外手当負担の増大を抑えるためにも、教員の働き方改革を進めてより良い勤務環境を整備すべきです。
 例えば、ICTを利用した正確な勤務時間管理を徹底や家庭との連絡の効率化を図ること、授業準備や部活動指導に外部人材を登用する等の対策が考えられるでしょう(学校における働き方改革~取組事例集~〔令和2年2月〕、改訂版全国の学校における働き方改革事例集〔令和4年2月〕)。

(2022.11.7)