学校法務Q&A

研修・部活動顧問について

【Q】 私立の学校法人なのですが、運営している中学校の教員に関して、①研修や教育訓練の受講に充てられた時間及び②部活動等の顧問業務に充てられた時間について、労働時間に該当し賃金等を支払わなければならないのでしょうか。

【A】 ①②とも労働時間に該当すれば賃金等の支払いをしなければならないところ、①については研修等への参加が業務上義務付けられているものについては労働時間に該当するでしょうし、②については部活動の顧問に就くことが業務上義務付けられている場合には、労働時間に該当するものと思われます。

【解説】

1 労働時間とは

 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります(最判平12・3・9、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
 そして、労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則等の定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。具体的には、明示又は黙示の命令の有無、不参加の場合の不利益扱いの有無、不参加の場合の業務への支障等の事情を考慮することになるでしょう。

2 研修時間や部活動顧問の時間について

⑴ 研修・教育訓練について
 研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しないと思われます。もっとも、研修・教育訓練への参加・不参加について、事実上参加を強制されているような場合(ex.就業規則で減給処分等不利益処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりする等)、には、労働時間に該当することになるでしょう。
⑵ 部活動等の顧問業務について
 公立学校の教員は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(いわゆる給特法)及び「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例」(いわゆる給特条例)等の条例により、給料月額の4パーセントが教職調整額として支払われており、その代わりに、原則として時間外勤務手当等を支給しないこととなっています。他方、私立の学校法人の教員にはこれらの法令の適用がありません。そのため、早朝、放課後や休日に行われる部活動・サークル等の顧問業務の時間について、労働時間に該当して時間外労働割増賃金の支払い義務が生じることになるかが問題となります。教員が部活動等の顧問業務を担当することが業務上義務付けられている場合、使用者の指揮監督下に置かれているものと思われますので、労働時間に当たるものと考えられます。他方、顧問業務の担当が業務上義務付けられておらず自由参加であって、不参加の場合の不利益等がないような場合には、労働時間に該当しないでしょう。
(2022.6.10)